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コラム

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口腔がんはどんな検査をするとわかる?

口腔がんをみつける方法で、日常的に行われている方法は、実は一番簡単な「視て、触って」調べることです。
これを視診(ししん)、触診(しょくしん)といいますが、単純で確実な方法といわれてきました。口の中は、身体の中と違って直接みることもでき、さらに触ることができるので有効な方法です。 しかし、早く、小さな病気をみつけるとなると、多くの口腔がんの患者さんを視ていないと判らないのも事実です。
それだけ口腔がんの初期の形は複雑で、鑑別しなければならない病気もたくさんあります。視て触るにもトレーニングが必要で、 一般の歯科クリニックでは難しい場合もあります。そして検査の前にもう一つ大切なことがあります。

それは検査を受ける方が「お口に関心を持つようになる」ことです。虫歯や歯周病だけでなく、お口の中にはたくさんの病気があること。 それは食べる、飲み込む、話すなどの様々な機能と密接に結びついていること。さらにそれらが失われると回復させるには大変な労力がいることを理解することです。 常日頃から「粘膜(お口の内側)に異常はないか?)「食べたり、話したりした時に、いつもと変わったことがないか?」などに注意して頂くことも大切です。

口腔がんを早期に発見するため方法は、

  • 1に、お口(口腔粘膜、口腔機能)に興味をもつ。もってもらう。
  • 2に、視診(訓練された専門家の目が必要です)
  • 3に、触診(訓練された専門家の目が必要です)
  • 4に、その他の方法 と言えます。
  • その他の方法には、現在
  • 1.蛍光装置による観察
  • 2.生体染色 (ヨード染色やトルイジンブルー染色)
  • 3.細胞診
  • 4.組織診(生検) があり、それぞれ特色があります。

蛍光装置による観察は、最近出てきた方法で口腔内に特別な波長の光をあて、変化を視診で観察する方法です。4つの中では被験者の負担が一番少ない方法で、視診、触診の補助的な手段です。

生体染色は、組織診の前に行われることが多く、粘膜にヨードやトルイジンブルーを塗って調べます。これも一定の訓練が必要です。

細胞診は、「細胞診」ってなに?で解説いたしました。視診、触診のあとに、怪しい所があれば、追加で検査するのが一般的でしょう。

組織診(生検)は確定診断のために、一部を切り取って調べる方法で通常高次医療機関で行われます。

これらの方法の中には、まだまだ普及途中のものもありますが、近年、歯科クリニックでも視診、触診を主体に蛍光装置を補助的に使い、必要なら細胞診を行う方法が推奨される様になりました。企業健診でも使われるようになると、お口の病気がもっと早期に見つかると思います。

著者プロフィール

東京歯科大学 市川総合病院臨床検査科病理
客員教授 歯学博士
田中陽一 (たなか よういち)

1974年 3月 東京歯科大学卒業
1974年 5月 東京歯科大学病理学教室第二講座助手
1977年10月 イタリア政府奨学金留学生として留学
1979年10月 東京歯科大学病理学教室第二講座講師
1987年 8月 慶應義塾大学中央臨床検査部病理助手
1994年 8月 慶應義塾大学医学部専任講師
1998年10月 東京歯科大学市川総合病院臨床検査科助教授
2006年 4月 東京歯科大学市川総合病院臨床検査科教授・病理検査室長
2015年 4月 東京歯科大学市川総合病院臨床検査科客員教授(現在に至る)
歯科医師、歯学博士、死体解剖医(病理)、
日本病理学会認定口腔病理専門医・研修指導医、日本臨床細胞学会細胞診専門、
NPO法人口腔がん早期発見システム全国ネットワーク副理事長など