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コラム

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歯周病②

歯周炎が存在すると総コレステロール値とLDL値も高くなるのはなぜでしょうか?

総コレステロール値とは、血液に含まれるコレステロール(中性脂肪、悪玉コレステロール、善玉コレステロール)の総量のことで、正常値は150〜199mg/dlです。 LDLは、低比重リポ蛋白(Low Density Lipoprotein)のことで、悪玉コレステロールとも 呼ばれています。正常値は120mg/dlです。

歯周病原菌によって歯周炎が引き起こされると、血管を形作っている内皮細胞が傷つけられます。この傷害によって内皮細胞が活性化して、接着因子やケモカイン(炎症性物質)が作られます。これらの接着因子や炎症性物質の助けをかりて、血管の中を流れている血液細胞(単球)が血管壁にくっついて、血管壁の中に潜り込みます。潜り込んだ単球は名前を変えてマクロファージとなります。マクロファージは炎症性物質(サイトカインやメディエーター)を産生したり、脂肪などを食べたり(貪食どんしょく)することができます。 炎症性物質が放出されると、血管壁に炎症が起こります。同時に、マクロファージは悪玉コレステロールを貪食して血管壁に蓄積させてアテロームを作ります。 アテロームは動脈硬化の病巣のことで、動脈の内側の層(内膜)にコレステロールなどの脂肪からなるドロドロした「粥かゆ状物質」が貯まってできます。アテロームが次第に厚みを増すと、 動脈の内腔が狭くなったり血栓ができたりします。

歯周炎がきっかけとなって引き起こされたこのような変化の過程で、 マクロファージが悪玉コレステロール(LDL)を貪食・蓄積するのでLDL値が高くなり、 アテロームが形成されるので総コレステロール値が高くなると考えられています(図)。

著者プロフィール

下野 正基(しもの まさき)

東京歯科大学名誉教授。1970年東京歯科大学卒業、1974年ミラノ大学医学部薬理学研究所客員研究員、1976年学位受領(歯学博士)東京歯科大学、1991年東京歯科大学病理学講座主任教授、1998年東京歯科大学学監、2005年 FDI(世界歯科連盟)理事、2011年東京歯科大学定年退職。

著書(近刊)「新編治癒の病理、臨床の疑問に基礎が答える」(単著:医歯薬出版)、「やさしい治癒のしくみとはたらき」(単著:医歯薬出版)、「歯肉を読み解く」(共著:医歯薬出版)、「新版口腔外科・病理診断アトラス」(監修・共著:医歯薬出版)、「下野先生に聞いてみた①ペリオ・インプラントの疑問に答える、指針がわかる」(単著:クインテッセンス出版)、「新口腔病理学 第2版」(編集・共著:医歯薬出版)、「下野先生に聞いてみた②エンドの疑問に答える、指針がわかる」(単著:クインテッセンス出版).